俺は太ももの上で、ぎゅっと手を握った。
震えを止めるために。
悔しかった。
聞きたくなかった。
そんなにも遠い将来の話。
父さんのいない将来の話。
悔しかった。
わかってしまった。
父さんの覚悟は俺の覚悟なんかよりも、
強くて遠すぎて次元が違いすぎて
俺がどうこう出来るところではないと。
『英治…!』
父さんは細い腕を回して、俺を抱き締めてくれた。
震えは止まらなかった。
止まるどころか、
『う…っ』
涙が溢れてきた。
『う…うわぁぁぁあ……ん!』
10数年の人生でこんなに泣いたのは初めてだ、ってくらい涙も止まらなかった。
俺の覚悟なんてこの程度なのだ。
『とぉさぁ…とぉさぁん…!』
頬が痛くて、呼吸しづらくて
泣くって苦しい。
そんな俺の背中を、父さんはずっと撫で続けた。
『ありがとう…』
すぐ隣から耳に入る父さんの声を、ちゃんと聞きたいのに自分の声が邪魔をする。
『ありがとう…』
