頭を丸めれば、父さんの気持ちに近づけるんじゃないかって思った。
辛い気持ちも、わかってあげられるんじゃないかって思った。
わかるはずない、とどこかで知ってても
諦めたくなかった。
父さんにも、諦めて欲しくなかった。
これは俺なりの覚悟だった。
父さんは『英治』と俺を呼び、俺の手をぐっと握った。
『今すぐ、の話じゃないぞ?
だから誤解しないで聞いてくれよ?
親って言うのは、子供よりうんと歳上なんだから、先に死ぬのは当たり前のことだ、わかるな?』
俺はただ、黙って頷いた。
げっそりと痩せて、決して顔色はいいと言えない父さんの、目と鼻が真っ赤だった。
『もしこの先、父さんに何かあったら、母さんや陽介や里香を
守ってくれよ』
俺が口を開こうとするのを
『今すぐの話じゃない』
と父さんは止めた。
『約束してくれるな?』
父さんは俺の目をじっと見た。
俺はちゃんと
『約束する』
と言葉にした。
すると父さんは安心したように微笑んだ。
