17-セブンティーン-



分娩室の前、入院中の父さんの姿はもちろんなく
俺と陽介でその瞬間を迎えた。

陽介は待ちくたびれて、俺の隣で眠っていた。

しかし産声が響くと、ぱちっと瞳を開き、嬉しそうに笑った。


《西原ベビー》今回はピンク色の札。

女の子である。


『にぃちゃん』

『うん?』

『どれがうちの赤ちゃん?』

『…正面の』


まだちびな陽介は抱えないと、赤ちゃんの姿は見えない。


『だとおもった~1ばんかわいいもん』


陽介は嬉しそうに笑った。
しかしすぐ、眉間にしわを寄せた。


『でもさ、にぃちゃん』

『何だ?』

『おしめどうするの?おんなのこだよ?

にぃちゃんかえれんの?』


陽介が心配そうな顔をして俺を見る。


俺は笑った。
久しぶりに笑った気がする。


父さんの姿はない、けど
いつかの父さんのセリフが頭を流れる。

このシチュエーションはまさにデジャブ。
面白いなぁ親子って。


陽介は首を傾げるが、俺は陽介の頭を撫でた。


『心配するな、陽介のだってどうにかなったんだし』

『ほんと~?』

『それに父さんは女の子の方が自信あるみたいだしな』

『そうなの?』


そして陽介は俺に『おしっこ』と言った。