それから陽介はすくすくと成長し、俺たちはまるで父さんを入れて3兄弟かのように
騒がしく楽しい毎日はあっという間に過ぎていった。
彼が生まれる前の心配は杞憂だった。
父さんは相変わらず俺を大事にしてくれた。
陽介も俺を「にぃちゃん!」と呼び、慕ってくれた。
この上ない幸せだった。
そして俺が小学校卒業の年、
お袋のお腹に新たな命が宿った。
しかしその頃、父さんが倒れた。
父さんは入院生活を余儀なくされた。
毎日お見舞いに通ったが、だんだん痩せているのがはっきりわかる。
そしてある日を境に、父さんは病室でも帽子を被りだした。
それが幼心にショックだったのを覚えてる。
日に日に大きくなるお袋のお腹と
日に日に弱っている父さん。
無邪気な陽介のお守りをしながら
心をどこに向けたらいいのか、楽な方へ切り替える勇気も
苦しい方と向き合う気力もなく
普通の小学生では考えられないような、重たい心を知らずのうちに抱えていた。
そして無事に赤ちゃんは生まれた。
