俺は毎回5冊借りて、休み時間、放課後、家で読み進めて
2、3日に1度は図書室に通っていた。
父さんはよく
『本が好きなんて…英治は頭がいいんだな』
と俺を褒めた。
良くも悪くも大人、ということで
父さんは俺との距離の取り方がすごく上手かった。
焦って近づくことも
露骨に避けることもない。
そしてまだこちらも若干7才くらいなのが功を奏して、慣れというものが生じた。
たわいもないことを話し、話しかけられるようになり
ある日「父さん」と呼びかけることが出来た。
さすがにそれは父さんもお袋も
そして俺自身も驚いて
でも父さんは「なんだ?」と笑ってくれた。
いつも父さんは笑って「英治」と、当たり前のように手を差しのべる。
俺もその手を当たり前のように握る。
窮屈さのない、自然な人間関係
これが家族なんだなと知った。
日に日にお袋のお腹は大きくなって
それは楽しみでもあり、不安でもあった。
せっかく父さんと仲良くなれたのに
もう話しかけてもらえなくなったら…
家族の温かみを知ってしまった以上、また暗い世界に戻るということを想像するのは、
最初からひとりぼっちとはまた違う悲劇だった。
