窓の向こうに
下半身が消え、上半身が消え、ポニーテールが消え、
青空だけが残った。


彼女のドロップアウトを初めて目にしたとき

俺はこれが本当に《当たり前の日常》になるのかと、心の底から疑った。


『1秒でも早く出て行きたいみたいでさ。

あの窓の下、チャリ置き場だから着地可能なんだけど、廊下の窓から飛び降りようとしたら、下は何もないからケガすんだよ』


と笑いながら話していた新しいクラスメイトが、とても遠く感じた自分がいた。


だが今、数ヶ月前の疑問は、俺の中で形を変え、はっきりとした答えを得ることなく

それでいて、答えを求める風でもなく、勝手に解決されようとしていた。


先ほどの彼女の登場と退場のおかげで、すっかり頭は冴えている。

黒板には《基本的人権の尊重》。


『みんなには苦手なものってあるかい?』


俺は左腕をぎゅっと握った。


遠くで雷が鳴っている。
本格的に梅雨入りのようだ。