私と亜里が受けるのは、県立桜花高校。


偏差値が低すぎず高すぎず。制服もそこそこ可愛い。…だから。


そんな理由で決めた。進学率も偏差値にしてはわりと高かったし。


それと。なんとなく、名前が気に入ったから。


桜の花。“オウカ”高校って読むんだけど。県立にしては珍しい名前。


名前が名前なだけあって、この学校は桜で有名。


校舎に着くまでに長い「桜花坂」って呼ばれる坂があるんだけど、春になると坂の両脇にある桜の木が満開になって、桜のトンネルが出来るらしい。


それを聞いて、単純に憧れた。入学式にそのトンネルを通るなんて、なんだか素敵だ。


けど。


「坂、長っ……」


歩いてるだけで息が切れてる亜里。無論、私もぜえぜえと肩を上下させて言ってる。


今はまた冬だから桜は咲いてないし、坂も雪だらけだから滑りそうで怖いし。


こんなんでテストなんか出来るのか。


校門の横で立ってる先生に挨拶したら笑われた。そんなにひどい顔してるのかな。


「まだまだこれからだぞー」


わかってます。なのでとりあえず、休憩時間をください。


中学校3年間ずっと吹奏楽部だった私達には、これは拷問に近い……。