重なる平行線

「あああぁぁ~……」
気の抜けた間抜けな自分の喉から細々と、店内のBGMに混じって消えた。

あー、
あー。思い出した。
触りました。触られました触られちゃいました触らせちゃいました。

…水貴。

君の手垢(指紋)はバッチシついてることでしょう。


「触ったのは私と、…もう一人…います」
「…おや。どこのどいつか、お教えお願いできます?」

「…あぁッと…」
どうする。どうする私。
水貴にはあまり迷惑をかけたくない。
流石に水貴の家までは知らないけど、通っている学校とかは知っている。
けど私が言ったら、渡貫さんが水貴にコンタクトをとるのはほぼ必至。だけど、うん、む…。
あー…もういいや。
あの時あげたたい焼きのお代、ってことで。
スマン、水貴。
そう心中で詫びを入れておいた。

「渡貫さんも会った人物です」

敢えて明確には言わず、曖昧に濁す。

「アタシが鈴原サン経由で会った人物…。あの二人の坊や達ですか」
「あーまぁ」
「確か赤の他人とお聞きした気がしますけどねぇ」
「人との関わりはいつ何が変わってもおかしくはないのですよ」知らんけど。

「確か鈴原サンにひどく似ている少年がいましたねぇ。その子ですね」
肯定文ですか。