重なる平行線

「あぁ、それと…面白いことを聞きましたよ。…鈴原サンについて」

口を閉じて、嫌な間を開ける。舌で下唇を湿らす。一拍置いて、忌まわしい言葉を吐きかけられた。

「昔、ご家族と色々あったみたいですねぇ」

サァッと血が引いて、拳と喉の奥が熱くなる。
理性をかき集めて、殺意を噛み殺す。

ちらつく、昔の苦い思い出。
私が人に恐怖するきっかけとなったもの。幼い私が、たくさんの人に、大人に、裏切られた忌々しい過去が背中を這いずってくる。



…やめてよ。

『大丈夫、言わないから』

やめてってば。

『美月ちゃん、可哀想』

可哀想?なんで、ちがうよ。
なんでそんなこと言うの。
わたし全然、辛くない。

『助けてあげる』

…嘘つき

嘘つき、
嘘つき。

…誰にも言わないで、って。

……約束、
     したのに。


   お姉ちゃん
          』


「な、の」
「…ハイ?」