重なる平行線

目を細めて、にやけ笑いで線を踏み込もうとする。
「気になりますか?貴方のお母さんの安否が」

「……」

ニヤニヤ、
    にたにた。

築いた透明な壁を、ベタベタと手垢をつけられる感覚。

「嫌ですか?…踏み込まれるのは」
「……土足厳禁ですよ」
絡み付く視線から目をそらして答える。
…だから、嫌いなんだよこういう人は。
一つ一つ、確実に追いつめてくる。

「そういやァ、学校での鈴原サンは評判良かったですねぇ」

ピキ、と眉間に皺が刻み込まれるのが分かる。

「明るくて、いつも笑顔で、面白い子。…こんな事件に巻き込まれるなんて…、と皆さん心配されてましたよぉ」

「…聞き込み調査ですか」…ったく。

「アタシから見た鈴原サンは、随分と殺伐した印象ですけどねぇ…」
「そりゃあれですよ、親が死んだのに浮かれてられないとかですよ」
嘘だけど。
キャラを創ったところで、貴方には通用しないと判断したからです。

「…ガードが堅いですねぇ…」
ニヤニヤ、細められた目で値踏みするように私の顔を覗きこんでくる。

「あはは、なんのことだか」

にっこりと、今までに培ってきた表情筋を駆使して最高級の笑顔で返した。