渡貫さんと連絡を取るように推薦したのは、水貴だった。
無論、昨日の写真のことについて。
いわれずとも、私は連絡するつもり―…だったかどうかは怪しい。
面倒臭がりな私のことだからそのままスルーした可能性も否めない。

因みに、結局水貴は夕方まで私の家でくつろいでいた。
帰るときに暗くなるから送ると言ったのだけど、『女に送られるほど、俺はヤワじゃねぇよ』と断られた。
所謂、男のプライドとかいうやつかもしれないが、単に心配してくれたのかもしれない。

『無事帰還、異常無し。
あと、お前からメール来てたな。』と寝る前にメールが来てたから、心配はしなくていいだろう。
あ、あと津坂から
『メール届きました。
こちらこそ宜しくお願いします』と来てた。
どうでもいいけど、津坂って夏休みの内に計画を立てて宿題を終わらせるタイプだと思った。
夏休みが始まる前に、全ての宿題を終わらせようと試みる(そして失敗する)私とは大違いだ。


コーヒーを飲み、鞄から本を出す。
頁(ページ)を開いて、緩やかなメロデイの中、そっと目を閉じた。

…たまには、こういう空気、いいな。

目を開いて読書を再開する。
今私が読んでいるのは、過去に事件に巻き込まれ、色々なモノを無くし、嘘しかつけなくなってしまった少年の物語。
度々何かに巻き込まれ、何かを得たり、失ったりして。
だけど確かなモノを手放さない為に彼なりに生きる幸せをみつめて。

そんなお話。

読んでいて、ふと思う。今の私がこの本の中の彼だったなら。
どう、足掻くんだろう。
私は、何かに抗っているのだろうか。
何かに抗いたいのだろうか。

10頁ほど読み進めた所で、声がした。