郵便受けからチラシ数枚と封筒を持って家に入る。

「お邪魔しまーす」

誰も迎えない家に、水貴の声が響いた。

「どーぞ」

言ってから、自分の部屋へと向かう。
水貴も私の後に続いた。

鞄とチラシの類を机に置き、ベッドにあったクッションを柔らかく水貴に投げた。

「はい、そこらへん座っていーから。…お茶でいー?」
「ん。おぅ、お構い無くー。」
部屋綺麗だなー、という水貴を背に、リビングへと向かう。
一応客人だし、飲み物くらい出さないとね。
冷蔵庫を開けてお茶を取りだし、コップ(×2)へと注ぐ。

客用のコップが、2つ。
いつも私が使っていた猫柄のコップは、出さなかった。
見なかったので、警察に押収されたままかもしれない。

昨日、睡眠薬、何て聞いたもんだから朝は食器を片っ端から洗っていた。
神経質、と言われても仕方ないだろう。

お盆にのせて運ぶ際に、リビングが視界に入る。

たった先日、親が殺されて消えたこの家で。
会って三日目の男を自分の部屋に招き入れて。

「…どうかしてるよ、ね」

それは水貴を信頼しているからか。
…それとも、
単に寂しかっただけ?
「……」
まさかぁ、と苦笑いした。

そんな殊勝な感情、持ち合わせてないって。
首を一降りして、部屋へと向かった。