「あー…。この店選んだ理由は?」

目の前にはかったるそうにパイプ椅子に座って質問するお兄さん。

「はい。貯蓄をする必要が出来ましたので。社会勉強も兼ねて学ばせてもらいたいと思いました。それに、ここのお店、鯛焼き美味しいですから」

嫌みにならない程度に、爽やかに微笑んで答える。


只今、面接中。
バイト先は学校帰りにたまに寄る、たいやき屋さん。

事実、この店のたいやきは凄く美味しい。

普段はこのお兄さんとおやっさん(今は接客中。この時間帯は客いないけど)で切り盛りしている。

少し前は、ギャルギャルなオネーサンがバイトでいたが、すぐに止めたらしい。接客がギャルギャルしかったからだと思う。

「ふーん」

渡した履歴書を見て、何か頷いているお兄さん。
「君さ。」
「はい」
「よく買ってってくれる常連さんだよね」
…顔、覚えてもらえてたんだ。
「はい」
ん?…あ、言われることが予想できた。
「確か澄ヶ崎学園の生徒だよなァ?あそこバイト禁止じゃねぇの?」
「…」

…一気に口調が変わったなぁー。
ま、変に距離置かれるより、こっちの方がいいかも。

「それに今は平日だしよ。学校はどうしたよ、サボったのか?」

うーん…。
「家の都合で…」
「家出とかだったらウチは雇わねぇよ」

あー、やっぱり誤解されてるなぁ。
あまり言いたくない、ていうか言ったことがないけど。
…まぁいいや。

「先日、親が亡くなりまして」
魔法の言葉、発動。

「それでえっと…」えっと…、どうしよう。
えっと、金がほしい!はいくらなんでも露骨過ぎる。

やばい、困った。
実際困ってるけど。(主に金銭的に)

ちらりとお兄さんの方を見たら、申し訳なさそうな顔をしていた。