「ここまででいいよ。送ってくれてありがとうね。」

「そっか。…じゃあ、気を付けて。」
女の子という点で気遣ってくれる津坂。うい奴。
「お前の家って、どこ?」
唐突に水貴が訊いてきた。

「え?家?」
何故に問う?…いいけど。
「そこ」ぴっ、と全体的に白っぽい一軒家を指差す。
「に美月ちゃんは生息しておる」
生息って、と軽く突っ込んでくれた津坂を横に「ふぅん」と淡白に反応する水貴。
深い意味は無いらしい。
「…ま、じゃーな。寄り道すんなよー」
するかよ。
「じゃ、気を付けてね」再度気遣ってくれる津坂。
「…うん。ありがとう」
もう一度礼を言い、二人に背を向ける。


「あ、忘れてた」
「え、水貴?!?」

そんな男子の会話が聞こえ、「…ん?」
そしてタッタッタ、と足音が聞こ「うぁ!?」

素早い手つきで水貴は、私の上着のポケットから携帯を盗みやがった。(因みに今の私の服装は制服の上に黒い上着を着ていた)

驚いて振り向けば、私の携帯を水貴の右手に、もう一つの携帯を左手にして、凄い速さで操作している。

あまりのことに突っ立っていたら、

「送信っと」

ぴろりらりん、と場違いな程明るい音が響く。

「ほら」ずいっと携帯を突っ返される。
「…は?」
「俺の番号とメアド。送っといたから、何かあったら連絡くれ」
「……」

「おいこらぁ!水貴っ」
水貴の頭を鷲掴みにして私から遠ざけようとする津坂。

「ごめんな、鈴原さん。俺が目を離したばっかりに…」
…お母さん?
「ほら水貴、帰るぞ!」
「あ、旭のも送っといたからー」
緊張感の無い水貴の声。
当然、津坂は「はぁ!?」うん。切れのいい反応。

「あーひっでー。それって美月とは連絡取りたくないってことー?旭くんひどーい」挑発する水貴に、
「な、違ェよ!!」間髪を容れずに反論する津坂。

あれ、違うのか?

ぎゃあぎゃあと近所迷惑に騒ぐ二人を見ていたら、何故だか津坂がこっちを見てきた。