「……」
水貴が敢えてしなかった、3つめの質問。
『親が殺されたのに、何故平気なのか。』
―私も。
私自身、何らかの反応をするかもしれないと思ったけど。
それは所詮、杞憂に終わった。
よく、人生を道やレールに例え、何らかの障害を壁だか落とし穴だかに比喩されたりする。
けど私にとっての『事件』はハードルでもなく穴でもなく、"親が殺された" "親が消えた"という事実が、道に書いてあった、
それだけなのだ。
私はその文字を見て、読んだだけ。
私は事件を目撃して、事実を確認した、だけ。
…真実は、知らないけど。
『悲しい』?
理屈は解る。
親が死んだ、血縁者が殺された、身内が消えた、身近な人がさようなら、育ててくれた人が惨殺遺体。
だから、恨む
だから、悔しがる
だから、悲しむ。
親が死ぬ→子供泣く
簡単な構図だ。
でも、それを私に強要されたところで、どうしようもないんだ。
だって悲しくないから。
…あぁ、その『何で』を訊いているんだっけ。
…そうだね、納得されやすい理由をお一つ上げるとするならば。
「好きの感情を向けるには程遠い人達だったから。…、虐待されてたし」



