重なる平行線


「そうですか」

そう言うと渡貫刑事は伝票を持って席を立った。

「呼び出したのはワタシですからね。ここはオジサンに奢らせて下さい」

「ん。何だおっさん、俺らの分も払ってけれんの?」

「えぇ、ここで会ったのも何かの御縁ですからねェ。」

ラッキーと喜ぶ隣で「あ、有難うございます!」
と津坂が礼を言っている。

「…ごっつぁんです」私もぺこりと頭を下げてお礼を言った。
…正直、すごい助かる。

「では何かあったら迷わず連絡をして下さい。いいですね?…そちらのお兄さん方もですよ」

真面目な顔で念を押された。

そして、また今度ー、と手を振りながら渡貫刑事は去っていった。

「……」
『また今度』、ね。

「あのおっさん、俺嫌いだわ。あんま会いたくねー」
「…奢ってもらったんだから、いいだろ」
拗ねた風な水貴と、それを苦笑混じりに宥める津坂。

…あ、二人の日常風景が見えた気が。

友達は良いねぇ、と嘯きながら時計を見る。