重なる平行線

一回の電話で何回『一緒に暮らさないか』と言われたことやら。

…もう、言ってこないだろうな。

裕一君が強情になって引き下がらなかった理由。

…引け目を、感じていたんだろう。

別に恨んでないというのに。

嫌みでなく、感謝していたんだけど。

しつこく同じ言葉を繰り返されると適当に返事をしてしまいそうで危なかった。


一人暮らしをしてみたかったから…というのはあながち間違いではない。

あと一つ、拒んだ理由を挙げるならば。

…ななみちゃんを傷つけたくなかった。

裕一君と富美子さんの間にできた、もう五歳になる従妹。
それがななみちゃん。

私によく懐いており、私も可愛い妹として可愛がっている。

…けど。

どうしても、駄目なんだ。

小さな子供の、楽しそうな笑顔を見るとどうしても――

殺意が湧く。

埋めた筈の何かが疼く。

あの無垢な笑顔を見続けると、普段押し隠した感情が視界にまで支配しようとする。
自分が制御できなくなりそうで、怖い。

怖いんだ。

好きだから、傷つけたくない。

だから断った。

これを『逃げた』と人は言うかもしれない。否定はしないし、寧ろ肯定する。

だけど―…、
この場合の立ち向かうとは何を指すのだろうか。