重なる平行線


「んーむーぬー」

口の解放を求めて抗議の呻き声をあげてみたけど、先輩は話すのに気をとられて気付かない。

鼻まで閉ざされてないから呼吸は出来るんだけど、こう締め付けられるとちょいと息苦しい。
少なくとも両手の自由は確保したい。

「俺達の事は心配しなくていいんで、仕事に戻って大丈夫スよ!そろそろ俺達も心配戻りますから、


       店長!!」



あ。

「あ。」

―…あ。


「…――

        …―」




鯛焼き屋、【愛で鯛】は一時閉店となった。
当たり前だ。

先輩から忠告として聞いていても、実際に目でみるのでは感じる危険度が違う。

先輩のうっかりで店長である山さんは顔を真っ赤に染め上げ、訳のわからない電波語を叫び、鯛焼きを放り出して何処かへと逃走していった。

今のところ他の店を壊したりとかは聞いていないので大丈夫だろう。

多分、そのうちひょっこり戻ってくると思う。

掃除している間、長浜先輩は落ち込んでいた。

お客さんに出せなくなった鯛焼きは持って帰って良いとの事。
食費が浮いて助かるぜ。

「―てなわけ。働くって大変だね」

…以上の事を電話の向こうにいる彼に掻い摘まんで報告した。