「ははは!

意外に子供の頃のことを覚えてるな。」

「ふふふっ。

そうね。」


「…。」

「ねぇ。」

「ん?」

「奏さんとキスしたわよね?」

「ああ。」

「水瀬さんとも。」

「ああ。」

「沙耶さんとも。」

「ああ。」


「…私だけ、してないわよ?」


「あのさ、柚葉。

俺のファーストはお前だろ。」


「…そうだったかしら?」

「覚えてないのか?」

「…兄様が私に…

記憶にないわ。」


「お前さ、中学生の時に風邪ですごい熱が出ただろ?」


「ええ。」

「お見舞いに行った。」

「…そう?」

「お前さ、かなり苦しそうだったけど無理に起きようとしてさ。


無理矢理俺がベッドに寝かしつけた。

そしたらお前が、」

「あ!?

兄様、そ、それ以上言ったら二度と喋れなくするわ。」

「思い出したか?」

「ええ。

ハッキリと。」


「その翌日、お前の風邪が移ってお前がお見舞いに来た。


その時に二度目のキスをしただろ?」


「…そうね。

でも、」


「俺さ、柚葉や皆としばらく会えなくて元気がないんだよな。

だから、」



2人はどちらからともなく近づき、キスをした。



「あの時、柚葉が言ったよな。

『元気になるには兄様から口移しで元気をもらわなくちゃいけない』って。」


「…兄様。

喋れなくなりたいの?」

「あ…

いや、これは、その。

…ん、」


柚葉が幸大の唇を唇で塞ぐ。

「今度言ったらまた喋れなくするわ。」

「この止め方なら何度も止めてほしいけど?」

「次は声帯を直に握りつぶすわ。」

「怖いぞ!!」

「そんなことしなくても、いつでもしてあげるわよ。

というよりも、兄様からしてほしいわ。」


2人は本日三度目のキスをした。