夜のこと

「そろそろ、恋ばなでも始めますか?」

嬉しそうに水瀬が言った時だった。


ギシッ、

ギシッ、


「何の音だ?」

奏が言う。


「…あ、あの、皆さんには教えますけど…

お化けが出るんです。」

結衣が言う。


「お、お化けですか!?」

水瀬が動揺する。

「はい。

しかも一人とかじゃなくて…

実はそのお化けは全て、この旅館の近くにある池に溺れた人が…」

「マジかよ…

お祓いとかは?」


奏が言う。

「一応やってみましたが…効果もなく。

部屋にお札を貼っても翌日には破かれてて…」


「ほ、本格的に危ないですよ〜。」

水瀬が涙目で言う。


「しー君に相談したら友達と泊まりに行きたいって言われて…」


「いや、話が繋がらないだろ、あの馬鹿。」

奏がツッコミを入れた。


「兄様の専門分野じゃない?」

柚葉が言う。


「あ、先輩は陰陽師的な力だって言ってましたね!」






「幸大!」

「先輩!」


奏と水瀬を先頭に全員がやって来た。

「な?

言った通りだろ?」

幸大が言う。


「兄様、何の話?」


「史郎から聞いた。

この旅館のお化けの話をな。

奏が怖いのが苦手なのは知ってたし、

水瀬もそういうイメージだったからな。


だから必ず、俺に助けを求めるって予想したら的中した。」