ここであたしが「奥さんがいる人とは無理」だと言ったとしても、ケンジがあたしを攻める事はないと思う。

そうするべきだったんだ。

……でも、出来なかった。

奥さんとは別居しているなんて聞かされたら、完全に離婚する可能性に賭けたい。

まだ始まったばかりなのにこれで終わりだなんて悲しすぎる。

そう思ったら、あたしの頭の中には1つの答えしか浮かばなかった。

“迷惑じゃないよ。だって、あたしがケンジと仲良くなりたかったんだもん”

……言ってしまった。

今まで人の物になんて興味なかったのに。

いけない事だとわかっていたけれど、それでも諦めきれないものがあるって、この時初めて知ったんだ……。