イマージョン

実際に作業に取り掛かるると、本当に自分に向いていると思った。単調な流れ作業を言葉を発する事無く、周囲を気にする事もしなくて済み、自分の世界に、どっぷりと浸かる事が出来るから。そして私を取り囲む人間達も、各々の世界に入り、私の存在を忘れているだろう。今日は初日と言う事も有って多少彼等の脳裏に私の存在が、こびり付いた状態かもしれないが日を追うごとにつれ、脳裏に、こびり付いた私と言う埃は消えて、この部署の、その他大勢の中に紛れ込む事が出来るだろう。そんな人も居たな。それ位で良い。私は、もう高校生の頃の様に変に目立とうとは思わない。あれは何だったのだろうか。やはり無知な故に無敵だと勘違いして来たからだろうか。それとも変に目立とうとして本当の自分を隠していたのかもしれない。根本的に周囲の目が気になるのは変わらない。そして今は人間対人間または人間達の存在が怖いし嫌いだ。そして面倒臭いのだ。だから自ら関わりを絶てば良い。社会は地層の様に深く、この地球で生きている限り人間と関わらなければいけないが、私は極力避けて通っている。生意気にもハタチにして、その様な事を思っている。人間は言語を操れる唯一の動物だが、それさえも最小限に抑えてしまう様になった。一体何故人間は生まれてしまったのだろうか。私は今、付属品を詰める作業をしながら気付けば自分で造り上げてしまった無限のループにハマっている。付属品を間違え無い様に、ループにハマって、太いケーブルは此方側に入れてループにハマって細いケーブルは太いケーブルの上に乗せてループにハマって、と手先と頭の中で、もう訳が解らなくなっていた所で、チャイムが鳴った。