イマージョン

私の周辺の人達に目を合わさぬ様、軽く挨拶をして慣れない作業に取り掛かりながら思う。馬鹿なりに医療事務の資格は再々々試験でやっと合格したけれど、私は今この仕事に就けて今までのアルバイトの中で1番楽しいと感じている。この部署も流れ作業だし、下を向いて同じ動きを繰り返して行けばいいだけで、他人と会話を交わさずに済むからだ。それに唯一、今1番近くで話しが出来る舞が居る。実の所、最近まで舞でさえ自ら連絡をする事に憂鬱を感じていた。たまにメールが来てもロクに返事を返さなかったり、呑みに誘われても何かしら忙しいから。だの理由を付けて断り続けていた。忙しいのは嘘では無かった。関根と言う癌のお陰で気持ちに余裕が無かったから。関根に振り回されていた頃は、家に帰れば何かに取り憑かれる様に医療事務の勉強に励んだ。無心になりたかったのだと思う。遅れていた分を、あっと言う間に取り戻して、それから試験の問題用紙を郵送し、数週間後に合格発表の通知が送られて来て、やっと合格した。その時タイミング良く舞から電話が来て、滞っていた任務を果たす事が出来た私は、やっと電話を受ける事が出来た。その電話が今回の仕事の事だった。私に迷いは無く、その後、関根を毒殺して今に至る。医療事務の仕事は、いつか始めれば良い。