残暑になっても、しぶとく生き長らえている私は無表情であって、9月に誕生日を迎えてから成人式の写真撮影を行った時と何が違うと言えば仁王立スタイル以外は変わらず店の奥を微動だにせずじっとずっと見つめている事だ。探していた、逃しかけていた獲物を見つけた。人混みが邪魔で目からビームが出せない。
成人式の時は借り物の真っ紅な生地に蝶が縫われた着物を着させられ、私の髪の毛の意識とは反した向きに髪をアップにされ、能面に真っ赤な紅と化粧を施されて、指示されるままリモコンで操作されるロボットの様な動きでフラッシュを浴びせられた。そう、今仁王立ちをしている表情と変わらずに。借り物の着物を着させられ顔も立体的な能面を首に押し込んで、その上に固めた髪を乗せられて。出来上がった写真を開いて見て私は直ぐに写真を閉じた。高校生の時の笑顔の面影など無い。バイトをしてから造り笑いだったのだ。老け顔に拍車がかかっているから多分30歳になっても差して変わらないだろう。自分の未来の顔だと確認して直ぐに写真を閉じた。立派な額の写真の行方は、もう知らないし、知りたくも無い。