自分の身体と心の存在を消してコロッケを油に滑らせ入れる時に、自分の指まで入れてしまった。ぼんやりして居た頭が一気に現実に戻る。私は関根に負けたのだ。関根にとって絶好のチャンスを与え続けてしまったのだ。そして私のコマは追い詰められた。自分が良いなと思った人に自らキッカケを作ってもコマは上手く進まず、逆にノーガードで先を見据えていないと、数時間前に起きた様な事になる。人は、そうして生きるゲームのコツを掴んで上手くなるのだろう。人間に対しての接し方を変えたつもりでも結局の所、私は前に進んでいない。もう10代が終わると言うのに何をして来たのだろう。何をして来たのか分からない。揚げたてのコロッケを切る。コロッケは揚げられる為にパンの粉から、ジャガイモを包んでいる。揚げられる役割を果たす為にパン粉と言う物がある。パン粉は、揚げ物に広く必要とされている。ジャガイモもだって肉ジャガとか、カレーとか、ポテトラサダとかに必要とされている。パンだって、お肉だって、カレーだってサラダだって、皆に必要とされ色々な役目を果たして居る。さっきは人間共は餓死しろと考えていたけれど、私以外の人間は私みたいにコマで追い詰められても生きる為に又立ち上がるのだろう。ならば大事な食を失ってはならない。先程の言葉は撤回しよう。私は愚かだ。直ぐにコマが追い詰められて自分が負けだと分かると心の中の大きな手でコマを撒き散らし無かった事にする。愚かだ。実に愚かだ。