「いつまで寝てんの!」
母親が洗濯物を持って私の部屋にズカズカと入ってくる。この家の造りは、2階の私の部屋に洗濯物を干せるベランダが有る造りになっているので嫌でも母親が部屋に入って来る。
「仕事はどーしたの?最近行ってないじゃない!追い出すよ!」
怒りを込めながらシャツをバサッバサッと広げる音がいちいちカンに触って耳障りだ。
「辞めたよ」
「は?何で?」
「色々あんだよ」
「全く…。何やっても長続きしないんだから…」
洗濯物を干しながら背中を向けてブツブツ言うその言葉を聞き逃さなかった。
「っせーな!色々あんだよ!探してくりゃいーんだろぁ!?」
バッチン!!
思い切り顔面をぶん殴られた。カっとした母親は狙い所が適当で定まらず鼻から左半分殴られて中途半端に痛い。痛さが益々ムカつきを増進させる。私は、殴り返そうと掴みかかる。母親譲りの勝ち気な性格と勝ち気な性格の主同士で、取っ組み合いが始まる。力では勝てないと分かっていても。落ち着いた筈の山下の事も蘇って来たのも有って腹の虫が収まらない。
「親をナメるんじゃないよ!」
重たい身体ごと突き放され尻もちをついて間抜けな格好になり、よくぞこんな恥ずかしい事をしてくれたなと、ベットに置いてあった携帯をぶん取り、
「探してくりゃいーんだろ!」
そう言って家を飛び出した。