「はぇ?」
口に含んだビールを吹き出しそうになった。
「だからー山下さん。山下さんが店長になったんだってば」
あーガブガブ呑みたーい食べたーい。と、既につまみでテーブルがいっぱいになっているのにメニューに目を輝かせながら舞が言った。
「つか、なんで?」
「よくわかんない。朝の朝礼で、いきなり、そーゆー事になりました的な感じで?人事異動ってやつじゃない?」
メニューに目線を落としたままの舞が、もちもちチーズと軟骨頼んで良い?と言いながら、オーダーボタンを押している。
「美夢ちゃんがライブ行ってる時だから楽しんでるとこ悪いかなーってメールしなかったんだ。彼氏と行ってたんでしょ?あ、たこわさ頼むの忘れた」
BLOODの熱から現実に引き戻され気怠い日常のバイトが終わった後に舞に呑みいこーと誘われた。今日1日、店長を見かけないな。山下さんと寺田さんしか居ないのは何故だろう。店長風邪でも引いたのかな。と違和感を持っていたから、舞に聞こうと思っていたのに今日は品出しの売り場が私は食品売り場、舞は雑貨売り場で、しかも休憩も別々だった為、疑問が喉に突っかかったままでいた所、タイミング良く舞が誘ってくれたから、やっと私の喉のつかえが取れた。喉に突っかかっていたものの今日も良く食べた。そして今も良く食べ、呑んでいる。2人共。