もう義則に用は無い。私は口には接着剤が付いている。帰りの電車の中で義則が隣に居ながら、1人ウォークマンでBLOODのアルバムを聴き始めた。義則も何も話し掛けて来ない。私が話し掛けないでと言うオーラを出しているから。東京ドームから家までは遠い。CDが1周しても、もう1度再生ボタンを押す。早く着かないかな。義則と離れたい。義則と別れたい。もう連絡もしないし、逢いも行かない。義則から連絡が来たり、家に来たりされても無視しよう。次に彼氏が出来たら顔は普通で良いから一緒に居ても恥ずかしくない人と付き合えます様に。それから、私より背が高い人。もう処女では無いから、歳上の人でも大丈夫だよね。処女は面倒臭がられるらしいから早く捨てたかったんだよ。それは義則に感謝しているよ。それ以外は何のメリットも無かった。義則も私に依存しているだけだから別れましょう。
2時間弱お互い無言のままやっと駅に着き、義則は、そのまま何も言わず何故か会釈して帰って行った。良かった。家が反対方向で。
水道橋の駅の階段を降りている時、義則と距離があって良かった。本当に良かった。私の隣りを歩いていた2人組の男が義則の後頭部を何度も指差して笑っていたから。義則は離れて歩く私を気にして振り返っていたけれど、後頭部だけでは無く、その振り返った顔も気持ちが悪かった。私は素知らぬ顔をした。あの2人組に、ちゃんと私は他人の振りが出来たのだろうか。