ベッドと健康器具とタンス、ハンガーに服がかけられただけのシンプルな部屋。物が無い、生活感の無い部屋。それは物件探しに来た時に何も家具が無くて、自分の声や物音を遮るものが無く、響き渡る感じと似ている。くつろいでて。と言われても、人の部屋を漁る訳にもいかないし、部屋には何も無いしましてやそんな仲でも無い。ベッドに座るしかなかった。
この場所で私は一体何をしているのだろう。何がしたいのだろう。浅倉さんを好きだと言っても何を思って独り暮らしの男の部屋に、ひょこひょこ上がり込んでいるのだろう。でもチィに逢いたかったのは本当であって…。チィが手から離れたら、そんな事ばかり考えて、自分が阿婆擦れで売女な奴だと思った。いや、多田と関係が始まった時からそうだった。違うのは、好きと言う感情が有るか無いかの違いだ。最も、浅倉さんはどう思っているかなのだけれど。