つまらないワイドショウを、ただ目で追うだけで、チィは私の膝の上で居心地良さそうにしていて、時折、「チィ」と呼ぶと飛び跳ねて、私の顔を舐めて来る。ほころぶ顔を隠せない私。
「俺より懐いてるな」
「あたし、動物の中でも特に犬が好きなんだ」
「ふぅん…」
また、会話が途切れた。
さっきまで皆と居た時は私は余り喋らなかった。けれど、純粋にチィに逢いたかったし、今、浅倉さんと2人きりで居られる事が嬉しくて、私から話しを切り出してみた。
「ねぇ」
「何?」
「何で、あたしを家に入れてくれたの?」
「チィに逢いたかったからだろ?」
「まぁ、そうなんだけど」
「…」
「…」
また会話が途切れた。
「風呂でも入っておいでよ」
「え?」
「お互い寝てないし疲れてんだろ。さっき洗濯ついでに風呂ためといたから。タオル置いてあるよ」
「…うん」
「?」
「うん」
浅倉さんは、居酒屋に居た時もカラオケボックスに居た時も誰かの為に食べ物やら飲み物を注目したり気を使っていた。そこに私は惹かれて行った。 今だって毛布を貸してくれたり、風呂を勧めてくれたり。常に周りを見ている。西村さんが私を好いている事にも気が付いていた様で、私の隣りに座らせていた。それに限っては鬱陶しかったけれど。浅倉さんは、最初は軽い男という第一印象しか持てなかった。だけれど、1日以上共に過ごして見て印象が180度変わった。そんな自分にも戸惑っているし、少しすました感じの顔立ちがどこか聖に似ている。 似ているのは顔だけで、聖は気の利かない男だった。
シャワーを浴びながら、今更になって聖を想い出してしまった苦い気持ちと煙草臭くなった身体と髪を洗い流した。