暫く海風に浸っていたら、舞が携帯の時計で時間を確認して、
「さて、行くとしますか」
思わぬ事を言い出した為また、間抜けな返事をしてしまった。
「え?どこへ?」
「飲み会」
「飲み会?いいけど、飲み会?」
「2人と待ち合わせしてるから」
「聞いてないよ」
「言ってないもん」
「…」
「事前に知ったら美夢、来ないかと思ったから」
そうかも知れない。
「私の職場の知り合いだから平気だよ」
「平気って言われても…突然だな…」
「運命の人かもよ」
そう言うのに興味無いんだけど…。
「つーか舞は彼氏居るでしょ」
「…だらだら付き合ってるからさ。ここで良い人に巡り会えたらね。1人は顔見知りじゃないんだよね」
タクシーも拾えないし、帰りもタクシーは贅沢だからと駅までの道を体力が無い中、ダラダラ歩きながら反吐が出そうになった。さっきまで彼と結婚したいと言っていたのに。略奪愛。そう言う不倫って類は相手の家庭を壊してまで一緒になるって事であって、それ位、相手を愛しているからではないのか。やはり彼女は恋愛依存型。男が途切れると生きて行けない究極の寂しがり屋。これから良い人に巡り会えたら今の彼とはバッサリ切るのだろう。何て残忍なのだろう。相手の奥さんは救われるかも知れないが、不倫関係でなくても彼女はそうする気がした。自己中心的。彼女の人生は彼女が決める事ではあるが。考えると、やはり反吐が出そうになる。反吐。そう、私は常に吐き気と戦っている。いや愛している。好きだ。しかし他人の為に反吐など出したくはない。