イマージョン

電車に揺られ大体30分、そこから歩くと私の体力が持つか自信が無かった為、「遠いから」と理由づけてリッチにタクシーに乗り込んだ。タクシーだとほんの10分位だろうか。舞と2人で料金を割りカンしてタクシーを降りると、海の香りがして来た。強くもなく、弱くもない中間位の心地良い風と波が気持ちよい。思わず伸びをして潮の香りを沢山肺に取り込んでいたら、こんなに深呼吸したのはどれ位振りだろうと思うと共に、爽やかな空気を欲している未完成な自分にも気が付いた。「その腹は…ヤバイでしょ」少し感傷的な気分になっていたら舞の言葉に、どう返して良いか分からず、舞が座っている砂浜へと続く階段に腰かけた。どうやら、お腹が見えた様だ。「ヤバイ?」
「うん。アバラ、絶対浮き出てるね。それから顔、痩けてる。ダイエットつーか、やつれた?病的な痩せ方」
「病気じゃないし。まぁ…仕事のストレス?色んなオヤジ相手にしてるとストレス溜まるよ」
「変なクスリやってない?」
「そこまで落ちぶれてないし、やってたら今頃ブタ箱でしょ」
手錠を嵌めた真似をして見せた。
「そうかも知んないけどさぁ、改札で探しちゃったよ」
「10代が大食いだったんだよ。6年も逢ってないと変わるりもするよね」
う~ん…。と腑に落ちない感じで唸りながら舞は煙草に火を点け始めた。