収入が安定していない現状だけれど私は舞を残して工場を辞めた事を後悔していない。舞が教えてくれなかったら私は誰よりも馬鹿女だった。聖には女が居た。舞は、小柄な女が聖と一緒に歩いている所を見たと教えてくれた。それで私は聖に直接問い詰めた。彼は慌てふためいて否定していたけれど、私が問い詰めた日から彼の態度が一変したから分かり易かった。私を避け始めた。私が残業をすると彼は残業をしないでそそくさと帰った。私の目の前で違う女と仲良く話している。聖は只の、すけこましだった。だけど私は聖に惚れていたから、ショックが大きかった。いつも櫛を持ち歩いて髪をとかしているあの女に負けたくなかった。髪をとかしながら聖と笑い合っている。髪をとかしまくって製品に髪の毛が入っちまえ。髪質が良いだけで顔は大した事無いくせに。私よりババァのくせに図々しいんだよ。大体、聖と仲良くなる前から髪とかしてたか?他人に興味が無いから知らないけれど、どうせ、すけこましの聖から声をかけたのだろうけど。私も聖にまんまと騙された1人だ。負けない。それから週1回のペースで髪の色を変えた。金、黄色、オレンジ、青、緑。聖に気付かれたくて染めた。この工場は外見にうるさくないから救われた。赤く染めようとした日、私の硬い髪質は上手く真っ赤に染まらなかった。だから1度、金色に完璧に脱色してから赤いカラーリングを施した。上手く染まった。血染めの紅みたいに。