「何か美夢の目から、きゅんきゅんビーム出てんだけど」
「え?」
ビームと言う言葉に敏感に反応してしまう。私は今は人間であるはず。私は直ぐ、え?とか、は?とか間抜けな返答をしてしまう。必要最低限の会話しかしないから、突然話し掛けられると言葉のレパートリーが少ない為に、どうしても、こんな風になってしまう。最も、自分の世界に入ってしまうからいけないのだ。だけど、ここ数年で、その様に形成されてしまった物を変えるのは難しいし、何より親しい人以外の人間は、どうしても好まない。間抜けな返答に相手は苛々するかもしれないが、舞、それはどうか見逃して欲しい。と図々しいお願いをしていた。
「あぁ、化粧してるからだ!いいじゃん!いいじゃん!アイメイク大事よ~」
あぁ、そういうビームか…。
「髪、染めたし化粧もした方がいいかなぁと…」
「なになに?何かあったの?」
聖さんとのさっきのやり取りの事は頭の片隅に置いて、興味津々な所を悪いなと思いつつ、何もないよ。と答えると、酷くガッカリした様子を見せた。本当に何も無いし、愛奈の事も舞は知らないし…。私って本当に話題に欠ける女だな。舞は何でこんな話題に欠ける女と友達になってくれているのだろう。そう言えば、私って友達少ないよな。高校生の時の友達も全然連絡を取っていないし。と言うか面倒くさい。また自分が惨めになりそうだし。アンドロイドになれば良さそうだけれど友達の前で、ましてや、わざわざそうまでして友達と逢う必要など有るのだろうか。私って舞が居なかったら孤独じゃん。今この工場の中で、孤独を分かち合える人って何人居るのかな。そうしたら孤独な者同士で、孤独同盟を組んで友達100人出来るのかな。いや、友達は数じゃないよね。聖さんの周りには、きっと友達が沢山居て、可愛い恋人もいるんだろうな。あ、また聖さんの事考えてる私。あの瞳は反則だよ…。
「瞳?」
知らぬ間にボソっと言葉にしていたらしく、舞の瞳は爛々として、此方を向いている。私は聞こえないフリをしながら、猫の様に指を内側に折り曲げ自分の爪を見つめる。