「歳いくつですか?」
作業に没頭していた為、身体がビクっとした。いきなり頭上から声が降りかかって来た。ちょっと目線を上にしただけでは声の主が分からないので、仕方なく顔ごと上を見上げた。
「え?」
「いくつですか?」
声の主を見て私は、瞬きするのを忘れていた。この瞬間は人間であるから目が乾いてしまう。すらっと細身で腕から綺麗な筋肉が出ていて、髪型は黒のサラサラヘア。鼻筋が通っていて高く、輪郭から顔のパーツ1ミリも狂いが無い。私は今まで、こんなに見た目が完璧な男性を見た事が無い。決して大きくは無いが切れ長で、吸い込まれそうになってしまう瞳に、自分の頬が赤くなっていくのが分かり、動揺を隠したく、作業に戻りつつ下を向いた。
「ハタチ、です」
「あ、歳下なんだ。俺23」
「はぁ」
「てゆーか髪の色変えたんだね」
「…何で知ってるんですか?」
「何でって…同じ部署じゃん。あなたの隣りについたのは今日が初めてだけど…」
こんなに素敵な人居たっけ…。あぁ、自分がいつも俯いているから分からなかったんだ。逆に、この人は背が高いから直ぐに気が付くいたのかな。
「この前、ごめんね」
「?何かしました?」
「ほら、トイレでぶつかっちゃて…ごめんね。大丈夫だった?」
トイレ?トイレ…。休憩には良く行くけれど何かあっただろうか。考え込む私に続けて言った。
「何か、すごく慌ててたけど…」
やっと思い出した。ゲロニュースを聞いて、本当にゲロを吐きそうになってトイレに駆け込んだんだ。そうか、この人だったんだ。
「あ、あたしこそごめんなさい」
もう1度顔を見上げると、彼の優しい笑みが返って来た。恋に関しては防御率が低い私は彼の瞳のビームにやられてしまった。
「名前聞いてもいい?」
「美夢…です」
「俺は…聖。よろしくね」