イマージョン

夜になってから、返しに行くの忘れてた。と眞奈が言っていた映画を観ていた。見た目は男性で人間の姿だけれど、実は彼らは天使で、死神でも無いのに死が近い人間の傍で見守る…そんなストーリーだったと思う。何故見守るのかは分からない。私は今、テレビの向こう側では無くて此処に居る眞奈を見守る使命が有るから映画の内容が、きちんと入って来ない。大切なものを優先したいから。きっと映画の天使達と同じ状況だろうか。けれど私は眞奈を死なせはしない。帰らないで。1人になりたくない。そう私に訴えて、また薬を飲んでいる、そんな眞奈を放って帰る訳には行かない。ベランダの窓を開けっ放しにして煙草を吸う。夜になると心地良い風と鈴虫達の鳴き声に気持ちが落ち着く。眞奈には身体が弱っているからタオルケットを背中にふわりとかけてあげた。遠慮される前に黙って、そっと。眞奈も薬か鈴虫達の鳴き声で落ち着いたのか、最近ちょっと嫌な事があるの。と口を開いた。
「どうしたの?」
「となりの部屋から毎日のようにアエギ声が聞こえるの」
「前、来た時そんなの聞こえなかったけど…」
「彼氏が出来たのか引っ越して来たのかわかんないけど…ウチ壁うすいでしょ?だからテレビの音は前から聞こえてたけど、それは、お互い様だと思って気にしてなかったけど…。でも最近になって…。1回ムカついて最中に壁蹴ったんだ。そしたら声がロフトに移動しただけで…」