私は走り続けている。普段から煙草を吸っていると、直ぐ息切れをして疲れて立ち止まるらしいけれど今の私は、それよりも走り続ける事が重要であって、駅から普通に歩いていたら20分かかると言われていた道のりを恐らく10分弱でゴールしたのではないかと思う。ゴール?違う。このアパートの階段を上がりインターホンを鳴らして眞奈に逢うまではゴールとは言えない。電車は渋滞しないけれど、眞奈の住む駅まで停まらないでくれと運転手に願ったし、私が運転をしたかった。電車は車の運転よりは簡単に見える。免許は持っていないが工場のラインに乗る様にレールの上を走れば良い。得意分野が見つかった気がする。それから信号。あと何個の信号を潜り抜ければ辿り着けるのかと障害物競争を自分でイメージをした。ビームだけでは無く、透明人間か、空を飛べやしないか考えた。空さえ飛べる事が出来たならば電車に乗らずに済む。だけれど私はアンドロイド。重量が有るから残念ながら空は飛べない。透明人間は"人間"。だから私は、ひたすら駅から走り続けた。眞奈と自転車を2人乗りをして転んだ時に私を笑った、おじさんをチラッと思い出したが、直ぐに消え去った。信号以外で止まる事を知らない私の身体は前しか見えていなし、周囲の目が気になる感情が今は、これっぽっちも無いからだ。まだ暑さが残る季節で走り続け、毛穴が有る為、汗をかきながらインターホンを鳴らした。