「ぜーんぶ丸聞こえだったけど、夏村」 「その言葉、言う相手違うんじゃない?」 「ぁ、成田? あたしそんな怖い〜?」 「怖くねーよ」 成田は顔を引きつらせて言う。 噓が下手な奴だなぁ。 …ん? 俺は、自分に向けられた視線に気づく。 「柚、なに」 「ぁ、ううん! そうだ」 柚は鞄の中から何かを取り出した。 「はい! あげる!」 優が出したのは、俺の好きなビターチョコ。 「ぉ、わかってんじゃん」 俺はチョコを受け取った。