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「南にい、うちね好きな人が出来た」


家を出て大学の近くにアパートを借りて一人暮らしを始めて間もない頃。


突然、柚が訪ねてきた。


何を言っているのか理解出来ずにいる俺に、さらに追い討ちをかける。


「でもね、緊張して喋れなくて…。どうしたら喋れるかな?」


「なんで…俺に聞く?」


「だって…、南にいだったら色々知ってそうだしさ。…森(シン)ちゃんのこと」


「…は?」



思わず言葉を失ってしまった。


柚が好きな奴って……


「…森なわけ?」


「うん。南にいの弟の、森ちゃん…」