「もしもし、俺」
「あぁ、こっちは変わらずだぞ」
「そか…」
「そっちは?」
「ん…明日、朝一番で帰るわ」
ここに来て自分の中にあるのは、千梛の柔らかい唇と右手の感触。
最高にも最悪にもならない記憶。
ただ苦くて、切ないだけの思い出。
強く握りすぎだし…
あの手に
小さな右手に
どれだけの想いが積み重なっていたのか
子供みたいな指で
書いた文字に
どれだけの重みがあるのか
ひとつだけ言えるのは
俺には後悔しか残ってないこと。
散らばった記憶を拾い集めて
いつ取り出しても大丈夫なように
ちゃんとした記憶の箱に戻そう。
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TO 千梛
Sb ありがとう
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明日、朝イチで帰る
会いに来てくれてありがとな
いつかどっかで出会うことがあったら
その時は友達になろうな
ガク
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