二階に上がると、そっとリンの部屋を覗いた。
部屋の中には、何も気にした風もなく、ベッドに転がって少女マンガを読むリンの姿があった。
落ち込んでない、良かった――――安堵で胸をなでおろしていると、部屋の中から楽しそうな声があがった。
「あっ、レンー!何してんのー?」
こそこそと部屋を覗く僕に気付いたハルが、笑いながら声を掛けてきた。
「…なんだ、バレちゃったか」
「バレバレだよ?っていうか怪しすぎだから」
クククッ…と声を立てて笑うリン。
ドアを開けてそのまま部屋に入ると、そんなリンの隣に腰かけた。
「はぁーー…。つまんない」
そう言うと、リンは読んでいた少女マンガをベッドの端に投げ捨てた。
「あれ?このマンガ面白いって言ってなかったっけ?」
「面白いんだけどー…流石に何回も読んでると飽きるんだよね」
「そっか」
「他のマンガも何回も読んでるし。つまんないー…」
リンはそう言って唇をとがらせて、ベッドに肘をついた。
その仕草さえもかわいらしく感じた。
「本も読めばいいのに」
「文字ばっかりじゃつまんないもん」
そんな他愛のない会話をしているうちに、時間が過ぎていった。
「――――もう10時か」
「え?あ、本当だ」
僕が時間を告げると、リンは意外そうな声を上げた。
「そろそろ風呂入って寝るよ」
「うん、じゃあまた明日ね?」
「また明日」
そんな挨拶を交わし、僕は自室へ戻った。
それが―――――
こんな生活が、僕らの日常である。
