シザーハンズ



食堂に入ると、既にテーブルにはカレーの入ったお皿が並べられていた。

「…おせーよ!おめーらのせいで食べらんねーんだよ、早くしろよ」
「………………」

一人の少年が悪態をついた。誰も止めやしない。
いつものことだ、と割り切ってそのまま椅子に座った。

「みんないるねー?それじゃ、いただきます」

そんな先生の声を始めに、黙々と食べ始める僕ら。
基本、食事中に会話はあまりしない。するとすれば――――

もうカレーも食べきるという頃に、一人の女の子が口を開いた。

「ねぇ、そこにカレーのルー、落ちてるんだけど」

そう言って指差す先には、リンの皿の回りにぼとぼとと落ちているカレーのルーがあった。

「…………っ……」

リンは顔を真っ赤にしながらも、無視を決め込む。

「ねぇってば。どうにかしてよ」

誰も、何も言わない。
スプーンが皿をつつく音だけが聞こえてくる。

「無視するんだ、へぇー?それとも何、目だけじゃなくて耳まで駄目になったの?」
「――――いい加減にしろよ」
「………ふん」

思わず僕が声を荒げると、女の子は怯んだように鼻を鳴らして黙り込んだ。

「――――ごちそうさま」

しばらくの沈黙の後、リンが席を立った。
無言のままテーブルに落ちたカレーを拭くと、そのまま小走りで上がっていった。

「ごちそうさま」

リンの後を追うように席を立つと、彼女の部屋へ向かった。