相変わらずの蝉の声。




真夏の生ぬるい風は肌にふれるほどに暑さを増す。





どのくらいそうしていただろう。





開け放した社の扉と、蝉の声に包まれるお社。




私はふらふらと立ちあがり、お社に背を向けた。




おこんじょさまのお社。


今生の別れを告げる場所。





私は思い出す。



タケルが死んだと聞かされた今日。私はお社に向かって、おこんじょさまのお社の扉を開けた。




おこんじょさまは私に長い夢を見せてくれたんだ。





タケルのいたずらっぽく光る目


タケルの手の感触


タケルの白い歯


汗で前髪のはりついた額




私が忘れないように。


タケルが私にさよならを告げることなくこの世を去った代わりに。