「それでさ、俺は言った訳だ
 『この子が欲しい』って!」

「物じゃないんだから……」

そんな事知ってるよ。


「そしたらさ、借金返し終えるまで、
 家にハニーが住む事になったんだよ!」

よって同棲中!
どうだ、羨ましいだろ!


「……可哀そうに、羽仁(はに)……」


前の席の奴が、
彼に同情的な視線を向ける。

失礼な奴だ。


確かに最初は
無理やりだったかもしれないけど、
今はちゃんと本人も同意して、
俺と付き合っているのに。


あ、因みに俺が彼をハニーと呼ぶのは、
名字とかけての呼び名です。


「親の借金の所為で、
 無理矢理望まない相手に体を……」

「何か変な想像してない?」


「だって、お前が何もしないと思えない」

「失敬な!
 俺と彼はまだ清い仲ですよ!」

うそー。とそいつは言った。

いや、本当だ。


何度もアタックはしてみるけれど、
彼が望まない内は手を出すつもりはない。

無理矢理なんて、それこそ論外だ。


……でもそろそろ、
いいんじゃないかな、ハニー?


再び視線を前から、
彼の席へと移した所で、
始業のチャイムが鳴った。