「なんだよ、服部」

「俺も今、そう言おうと思ってたとこ」

「はぁ?」

「け、啓介君?!」

 そのまま、服部はギャラリーの女どもに満面の笑顔を向ける。でも、その瞳の奥は笑ってない。

「俺さ、アイツ好きなんだよね」

「ええっ??!!」

 口を揃えて誰もが驚く。

 つうか、俺も驚いてんですけど。いきなり何なんだ、こいつは?! よくも抜け抜けと……。

「あれ、知らなかった?」

 今度は俺に向かって聞いてくる。

 知ってたよ、そんなもん、嫌でも気付くだろ。

「け、啓介君、ホントなの?!」

「やだ、そんなの!」

「あんなでかい女のどこがいいわけ?!」

 それでも、服部は笑顔で対応。俺は不機嫌極まりない。

「なに、その口、裂かれたいの?」

 服部の言葉に、その女は慌てて両手で口を塞いだ。

「だからさ、アイツに何かしようとか考えない方がいいよ」

「え?」

 言いながら服部は、俺から離れた。そして、フェンスに顔を近付け、真剣な表情に代わる。

「もし、アイツに何かあったら……少しでも傷つけるような事あったら、俺、あんたらに何するかわかんないからさ」

 覚悟してろよ、と付け足しながらも、再び服部は笑顔を取り戻す。でも、その笑顔の裏はマジだと思う。

「じゃぁね、ファン続けてもいいけど、期待しないで」

 そう言って服部は、軽く片手をあげると、この場を立ち去っていった。

 目の前の女どもは、既に怯えきって、それ以上何も言わなくなっていた。なにをするかわからない、と言う服部の言葉が本気だとわかったからだろう。

 でも、あいつが言った『好きなんだよね』って言う言葉は、多分、俺に向かって言ったものだとわかる。

 挑戦、か……でも、何でもいい、俺は絶対に晶を渡さない。つっても俺の女でもないけど……今はまだ、アイツの気持ち、わからないから。

 だけど、もしあいつが、他の誰を好きでも、俺はその気持ちを壊したくない。

 渡したくないけど、傷つけたくない。

 晶――……お前の気持ちが一番大事だからな……。