ああ、なんて可愛いんだ。

 このまま、時間なんか止まってしまえばいいのに……。

 それから、俺はアキラと、いろんな夜店を見て回って、いろんな話をした。テニスの事も学校の事も、何でもアキラの事がわかるようで嬉しくなる。

 父さんと母さんが夜勤でよかった。もし今日が夜勤じゃなかったら、絶対に俺と行くって言っただろうし……夜勤万歳。

「そろそろ花火、始まる時間じゃね?」

「ん、ああ、そうだな」

 俺はアキラの手を引いて、花火が見やすい土手へと向かった。

 人混みをかき分け、俺たちは何とか川沿いの土手に座る事が出来た。既に空が暗くなっている。星がたくさん瞬いて、こんな瞬間をアキラと過ごせるなんて夢みたいだ。

 でも、本当に大丈夫なのか? アキラ、女の子だろ。

 なんか無性に心配になってきた。

「なぁ、俺、無理に誘ったけどアキラって家、大丈夫なのか?」

 花火が終わる頃には、遅くなるしな。でも、送るつもりだけど。

「なんか、遅い時間になって怒られねぇ?」

「大丈夫だよ、俺んとこ親父だけだし、仕事でいねぇし」

「……いないって」

 父親だけなんだ……知らなかった。いつも笑ってるから、そんな片親とかって風に見えなかった。なんか、聞いちゃ駄目だったかも、とか思ってしまう。

「あ、でも黙って来てる訳じゃねぇよ、ちゃんと友達と花火見に行ってくるって言ってあるから」

 そう言って、また笑う。アキラ、ごめんな、変なこと聞いて……。

 つうか『友達』って言葉に、俺の鼓動が一鳴り……友達、友達。

 俺は、アキラにとって、それ以上になれないかな――……いや、なりたい、俺はアキラの特別な存在になりたい。

 俺にとって、アキラがそうであるように。