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「やばい、早く来すぎた……」

 俺は街路の時計を見やった。

「四時? まだ二時間もアキラに会えねぇのか」

 でも、そんな時間なんかあっという間だろうな。アキラの事を考えてるだけで、幸せな時間が過ごせるって、俺すげぇ。

 とりあえず、約束の場所まで行く。

 夜店が並ぶ鳥居の前だ。でもすげぇ人だらけ……アキラの奴、俺の事わかるかな。

 俺は……俺はわかるよ、アキラの事、どこに居たって見つけられる自信がある。

 そう思いながら、俺はポケットに忍ばせた、アキラへのプレゼントを上から握りしめた。喜んでくれるだろうか、それが心配なだけ。

 そうこう思っているうちに、既に一時間前……後一時間、あと……。

 俺は、真っ直ぐに人混みを見据えた。

 そう、真っ直ぐだ。

 息を切らして走ってくる、アキラの姿が見えた。

 鼓動が高鳴る。 

 まだ一時間も早い。

 アキラ――……俺、思い込みじゃないって思っていいか? お前も、俺に会いに早く来てくれたって思っていいか?

「なんで?!」

「よぉ」

 俺は素知らぬ顔で片手を挙げた。落ち着け、俺……やばい心臓の音がでかくて怖ぇよ。アキラは、真っ直ぐに俺を見つめる。

 ああ、なんでだろう。こんなにドキドキしてるのに、アキラの顔を見るとホッとする。

 なんか、アキラは俺の鎮静剤か? 胸の高鳴りが、物凄く愛しいって感情に変わっていく。



――大好きだ。




 そう心で呟きながら、俺は、アキラの髪を撫でた。

「早く着いちまった」

「……俺も」