「は? 何謝ってんの?」

「いや、だって、ほら、俺、下手だし」

「始めは誰だってそうだよ、でも、ありがたいんだ」

「え?」

「ばっちし、俺の練習相手に相応しい!」

 俺は、アキラに向かって親指を立てて、笑ってみせた。だから、アキラもずっと笑っててよ。

 それから暫くして、コートの使用時間が過ぎて、二人で片づけ始める。

「あ、アキラは座ってていいよ、初めてで疲れてんだろ? それに俺が誘った側だし」

「いや、俺も使ったし」

 律義なんだな、アキラは……。

「そっか、じゃ、ネットの端っこ持ってくれる?」

「ん、ああ」

 二人で片付け終わって、コートを出る。俺が、夢に見ていた光景だ。二人で汗をかいて、二人で……どんなに嬉しかったか。だから、このまま終わらせたくはなかった。

 いつまでも、アキラと一緒に居たかった。

「また明日も来いよ」

 俺は思わずそう言っていた。

「はぁ? 何のために」

 きょとんとした顔のアキラが、目の前に居る。

「いいから、俺の練習相手」

「ヤダよ、もう、疲れた。絶対に明日、お前のせいで筋肉痛だよ」

 ヤダって言うなよ……へこむじゃないか……。

「はは、運動不足だからだよ」

「うっ……」

「じゃ、明日も待ってるから」

 それでも強引に、俺はそのあとの返事を聞かずに、アキラの頭を撫でた。

 返事はいらない……怖いから。そのまま、アキラから手を放して、俺は走りだした。

 何度も振り返り、夢じゃないよなって確認した。でもそこには確実にアキラがいて、俺は安心するんだ。

 絶対に来てくれる、そう信じてた。

 そして、その約束は守られたんだ。

 アキラは、毎日「また明日な」って言う俺の言葉通りに来てくれてた。

 嬉しかった。明日の約束が出来る事。そして会える事。

 俺は、ずっとこのまま続くんだって思ってたんだ。

 そして、いつか俺は言うんだろうなって考えてた。






 アキラが、ずっと好きだった――……って。