やっぱ嬉しいや……なんか、アキラと同じ学年って言うだけで、すげぇ嬉しい。なんでもない事だけど、すごく近くなった気がするのは俺だけだろうな。

 そうだ、アキラは俺の名前を知らない。

 知ったら、もっともっと気持ちが近付けるんじゃないか?

「俺と同じだ、俺はアキラ、よろしく」

「え?」

「なに?」

「お、俺も……アキラってんだ」

 知ってる……知ってるよ、アキラ。

「へぇ、同じ名前かぁ、なんか呼ぶの照れくさいな」

 覚えていなくてもいい。今日から、お互いの名前を知るところから始まるんだ。それに、俺が覚えてるから、それでいいんだ。

 俺が、すっと手を差し伸べると、少しアキラは考えた後、柔らかな感触が、掌に重なった。

 出来ればもう、この手を放したくない。そんな独占欲が心の隙間から顔を出す。

「じゃ、やるぞ、乱打」

「お、おう」

 やっとアキラもやる気になってくれた。俺は本当に嬉しくなって、はしゃいだ心を胸に、アキラと反対側のコートに立った。

 何度も何度も、俺からアキラへボールが飛んでいく。いっこうに返って来ないボールは、まるで俺の一方通行の気持ちのみたいだって思えた。 

「何で当たんねぇんだよ!」

 何度も、アキラは俺に打ち返そうとしてくれる。それがアキラの心だったら、どんなに嬉しいか……。

 アキラ、早く俺にボールを打ってこい。

 俺は何度でも、お前にボールを返すから。

 でもアキラは、息が上がってきている。