あれ、なんか唇が熱くねぇか?

 そう思って、俺は薄らと目を開けた。

「うわっ……ち!」

 くすくすと隣でアキラが笑ってる。

「あ、俺、もしかして寝てた?」

「うん、寝てた」

「何すんだよ、ったく」

「ジュースやめてタイ焼きにした、食う?」

 アキラは、俺の唇に焼きたてほやほやのタイ焼きをくっ付けてやがった。他に起こし方はねぇのかっつうの。

「いらね、俺、甘いの嫌いだもん」

「そ、残念」

 アキラがタイ焼きを口側から美味しそうに頬張った。なんだよ、これ……もやもやするな……って俺、アキラの口に運ばれていくタイ焼きに嫉妬してるみたいだ。

 くそ、タイ焼きの奴め、なんで食われてんだ。

 タイ焼きにしたらいい迷惑な嫉妬だな。

 俺はすかさず、アキラの手にある、もう一つのタイ焼きを奪った。

「何? やっぱ欲しかったの?」

「うるせぇ、タイ焼きってのは尻尾側から食うんだよ!」

 言いながら、思い切りタイ焼きを食べる。



――ぐ……甘ぇな、これ。



「そっか、尻尾側ね」

 そう言って、アキラも尻尾をかじった。

「今さら遅ぇつうの」

「あ、ホントだ。尻尾の方が美味い」

「同じだっつうの、馬鹿だろ」

 何でもない事に笑って、何でもない事話して、そんで触れ合って……ドキドキして。タイ焼きなんかに嫉妬して……。



 やべぇ、わかった。



 俺、アキラの事、好きになってる。